1:スミスマシンの特性とは
スミスマシンで問題になるのはウエイトシャフトの軌道である。
例えばバーベルベンチプレス。詳しい解説はベンチプレスのページを参照していただきたいが、バーベルを「ボトムポジションでは胸の方から→トップでは肩の真上へ」となるようにバーベル挙げる。つまりバーベルシャフトは頭上の仮想点を中心とする円軌道を通る。
シャフトが一直線上にだけ動く構造
なので、そのような円軌道には当然なり得ない。
そこを理解した上で、ベンチプレス、スクワット、デッドリフト、その他の種目を実践してみよう。まずはベンチプレス。
2:ベンチプレス
ベンチプレスの基本通りにトップで肩の真上にウエイトシャフトを持ってこようとすれば、ボトムでは胸の方ではなく
肩と腕が水平になるような位置に下ろすことになり肩の安全性に不安
が出る(→下ろした時の肩の角度と安全性について)。
かといって逆に基本通り肩に角度をつけて胸の方からスタートすると、足の方向に押すような形でウエイトを挙げていくことになり、大胸筋下部を強化するデクラインベンチプレスに近い形となる。
なのでスミスマシンでベンチプレスを行う場合はボトムポジション、トップポジション、そして足の位置もバーベルベンチプレスとは異なるポイントに調整する必要がある。
逆にインクラインベンチプレスやデクラインベンチプレスならスミスマシンがやりやすいかもしれない。
スミスマシン・ベンチプレスの問題点
フリーウエイトでのベンチプレスを実際にやってみればよくわかるのだが、特に初心者はたいてい左右どちらかにバーベルがかたむく。ダンベルならどちらかが思うように挙がらない、ということがある。
つまりフリーウエイトでは左右のバランスをとりながら挙げ下げするのことで利き手側と反対側との筋力のバランスを同時にトレーニングする事にもなるっている。
だが
スミスマシンではバランスが崩れていても利き手側の筋力で挙がってしまう。
そのため利き手側ばかりに負荷がかかり続け利き手側の肩などを痛める可能性もある。
以上の点に注意して、他の選択肢がなければスミスマシンでのベンチプレスを試してみよう。
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3:スクワット
スクワットと腰・体幹
フリーウエイトやスクワットの基本についてのくわしい解説はスクワットのページを参照していただきたいが、バーベルスクワットとちがい、スミスマシンでスクワットを行う利点は、
体が前後左右にぐらつくことなくバーベルの軌道が一直線上を上下してくれる
だが一方、スミスマシンでスクワットを行った場合、特に高重量を挙げようとすると右のようにアゴが極端に上がってほとんど上に向いてしまうようなフォームになることがある。アゴが上がってしまうということは
腹筋の力が抜けて緩み上体が過伸展(=後ろに反る)し腰に負荷がかかりすぎる状態
であり、
体幹が不安定な状態でのトレーニングはスクワットに限らずNG
である(→体幹・腰が反らないための腹筋トレーニング)。しかしバーベルでのフリーウエイト・スクワットでは
- アゴを上げすぎて背中が極端に反るとバーベルが後ろへ落ちそうになるので、腹筋群を収縮し体幹をしっかり使わざるをえない
バーベルスクワットが体幹トレーニング(→体幹とウエイトトレーニング)として優れているのはその点である。ところが
スミスマシンでは体幹が緩んだ状態でもトップまでフィニッシュできてしまう。
そして知らず知らずのうちに腰や膝などを痛めてしまうのだ。
重心位置とスクワット
ベンチプレスと同様、フリーウエイトでのスクワットのバーベル軌道は、厳密には一直線上ではなく股関節を支点とした円運動である。
なので一直線上でしか動かないスミスマシンでフリーウエイトそのままのトレーニングを再現するのはやはり不可能である。
特に注意が必要なのが重心位置。フリーウエイトと同じ感覚でポジションをとると、足にかかる重心が位置がフリーの場合と別の位置にずれることがある。かかとの方にずれてしまうと競技選手にとっては問題がある(→スクワットの重心位置足について)。
なので適切なフォームは
シャフトの担ぎ方
スミスマシンでのシャフトの担ぎ方の基本はバーベルスクワットと同様肩に乗せる事(→バーベルスクワット)。だがここでもスミスマシンならではの問題なのは、
肩にしっかりシャフトが乗っていなくても肩や腕で強引に持ち上げるように挙がってしまう
事。逆にシャフトが肩からは離れないように意識するがあまり、シャフトを引きつけるためにラットプルダウン(→ラットプルダウンとは)をしているように広背筋に力が入りすぎる点にも注意が必要である。
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4:デッドリフト
デッドリフト(→くわしくはデッドリフトのページへ)をスミスマシンで行う場合の注意点は、前記のスクワットとほとんど同様である。デッドリフトならではの注意点は、やはり「軌道が一直線上」に固定されているためフィニッシュで前のめりになりやすい点である。スクワット同様足の位置で重心位置とともにうまく調節する必要がある。
- アゴをあげすぎない
- 重心位置の調節
「軌道が一直線上」に固定されているスミスマシン・デッドリフトでのもう一つの問題は、膝にシャフトがどうしてもぶつかる点。膝にぶつからないようにするには足のポジションを後方に引くしかなく、しかしそうするとさらに前のめりになってしまう。
なので上右のような膝を伸ばし気味で行うルーマニアンデッドリフト(→デッドリフトバリエーション)か膝上の高さからスタートするニーデッドリフトがおすすめである。
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5:カーフレイズ
ふくらはぎの下腿三頭筋を鍛えるカーフレイズは、バーベルを使ったフリーウエイトはバランスをとるのが難しくどうしてもグラつきをおさえられない。そのためなかなか高負荷でのトレーニングが実践できないが、スミスマシンなら簡単に下腿三頭筋に高負荷をかけることができる。
フォーム作りも簡単、シャフトの担ぎ方はスクワットと同じでよい。
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6:その他のトレーニング
ベンチプレス、スクワット、デッドリフト以外にも、ベントオーバーロー(広背筋)、ショルダーシュラッグ(僧帽筋)、ショルダープレス(三角筋)、アームカール(上腕二頭筋)、アップライトローイング(三角筋・僧帽筋)、スナッチ(パワー・瞬発力)等使いようによって様々なトレーニングにスミスマシンは活用できる。上記三種目の場合の使い方解説を参考に各種目メニューを試してみよう。
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結び
できることならスクワットもベンチプレスもデッドリフト、あるいはその他の種目においてもバーベル、ダンベルなどフリーウエイトで行いたいが、フリーウエイト設備が十分整っているジムやクラブは少ない。問題もあるスミスマシンだが使いようによってはの軌道修正トレーニグなどこのスミスマシンのカバー範囲は幅広い。機会があったら使ってみよう。