「フィットネス」という横文字と「疲労」という漢字2文字、その上意味が相反する二つの単語をくっつけた、ややこしいネーミングのこのフィットネス-疲労理論。ホントに難しそうですね。
しかしこの理論を理解すれば、特にアスリート、競技選手にとってはトレーニング計画の幅が広がることは間違いなしです。怪我をした時のアスリハ(→アスリハとは)計画にも応用できるのではないでしょうか。
ではこの「フィットネス-疲労理論」とは、超回復と何がちがうのでしょうか?下の図を見てください。
→超回復とは
超回復理論では上の図のように
疲労→休息→回復
という1つの要素を1方向性に繰り返す直線的な考え方です。疲労したら回復するまで休む、単純でわかりやすいですね。普通のことです。それに対してフィットネス-疲労理論は
- フィットネス → 最終目標
- 疲労 → 最終目標
このように「フィットネス」要素と「疲労」要素を同時並行でトレーニングをすすめて最終目標を目指すという考え方です。下の図を見てください。
例えば今日のトレーニング、上図の赤矢印の部分で「ベンチプレスがMAX上がった」「ベストタイムが出た」ということはその時点での自分のフィットネスのレベルもベストだと言うことです。
しかし同時にトレーニング負荷に相当する疲労のレベルもその時点でワーストなので、
実際のパフォーマンスレベルはその時点ではベストではない
のです。この
★「パフォーマンスレベル」が最終目標の時点でピークになるようにトレーニング負荷強度と疲労レベルを調節していく!
つまり休息ではなく
強度と疲労レベルの相殺
によってピーク状態に持って行くのがフィットネス-疲労理論の考え方です。「定期的・明確な休息→回復期間を繰り返すことでフィットネスレベルが向上する」のが超回復理論の考え方でしたが、
定期的・明確な休息→回復期間を置かない
のがこのフィットネス-疲労理論の大きな特徴です。ではそれによってどういう効果がのぞめるのか?
2:フィットネス-疲労理論の効果と実践例
「定期的・明確な休息→回復期間がない」 ということは、フィットネス-疲労理論では「毎日トレーニングしてもよい」ということにもなりそうです。
あれ?おい大沼。さんざん毎日筋トレはダメだとかえらそーに言ってたくせに話が違うじゃねーか、・・・・とか言われそうですが、いえいえ、筋トレ、特に筋肥大・筋力アップをめざすならやはり超回復理論でトレーニング計画をすすめるべきです。つまり競技選手の場合の1例としてなら
- シーズンオフの体作りのためには超回復理論
- シーズン直前からシーズン中はフィットネス-疲労理論
というようにシーズンごとにトレーニング計画見直せばよいのです。試合直前まで超回復理論での筋肉トレーニングをしていては筋肉を発達することはできてもかんじんのパフォーマンスレベルは低いまま、ということになりかねません。前日の疲労があってもシーズン中や試合直前はトレーニングを続けなければなりません。
しかし
疲労があってもけっこう練習できて、しかもそこそこのパフォーマンスも発揮できる、
というのは多くの選手達が実感しています。なぜなら超回復させるには2日、3日と回復期間が必要ですが、超回復を考慮しなければ
一晩でもある程度疲労回復はしている
ので、翌日のトレーニング強度を調節して(下げて)疲労の回復レベルを上げていくのです。超簡単(?)に言うと超回復理論のベージで解説した
「積極的休息(アクティブ・リカバリー)・回復期」を長く計画的にとる、
ということです。
しかし実際にこのフィットネス-疲労理論にもとづくトレーニング計画を実践するのはかなり難しいと思います。定期的・明確な休息回復期間をおかないということは
トレーニング強度設定を間違えればオーバートレーニング
におちいってしまいます。そのため慎重かつ綿密な選手の体調管理と計画性が必要になってきます。
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結び
どうだったかな?。え? よくわからなかった? しかしトレーニング計画の所で解説しているトレーニングサイクルやピリオダイゼーション(ペリオダイゼーション)は、トレーニングを続けながら疲労を回復していくというこの理論にほぼ従っていると重います。一つの理論として言われると理解しづらいかもしれませんが知らず知らずのうちに実践していたりするのです。
とはいえたんに筋トレするだけなら超回復理論だけで十分です。フィットネス-疲労理論という考え方もあるんだということを頭のすみにぜひ置いといてください。
さて次は筋肉のそのものの働きの特性について学んでみよう。まずは筋トレで気になるやっかいな問題筋肉痛について!