1:筋力アップのメカニズム
例えば右のように腕を使って物を持ち上げる時、二の腕の上腕二頭筋が収縮(短縮性収縮→伸張性収縮とは)することで持ち上げるための力が発揮されます。この
筋肉の収縮によって発揮される力が筋力
です。そして筋力は
筋肉の断面積に比例
します。つまり
筋肉を太く=筋肥大すれば自動的に筋力も上がる
ということになります。
しかし太くなれば、負荷設定のメカニズムのページやインターバルとセットのメカニズムのページで解説した下の表
効果 |
負荷強度 |
最大反復回数 |
|
筋力アップ |
筋力アップ |
100% |
1RM |
90% |
<5RM |
||
筋肥大 |
80% |
<10RM |
|
筋持久力 |
70% |
<15RM |
|
60% |
<20RM |
||
※「1RM」とは全力で上げて1回上げるのが限界という意味。5RMなら全力で5回が限界の重さでそれがだいたい最大筋力(1RM、本ページの最後に詳しく解説)の90%ほどだと言う事です。逆にできた回数から逆算して最大筋力を割り出す事ができる。(例えば50kgで10回できれば50/0.8=62.5kg) |
の通りの1RMの重さがに上がるようになっているかというとどうでしょうか?とてもじゃないけど重くて上がらないですよね。つまり
筋力アップ = 筋肥大ではない
ということではないのです。
「筋力アップ」のトレーニングと「筋肥大」のトレーニングは方法が異なる
のです。
例えば筋トレ初心者の場合、最初の数週間くらいは見た目の筋肥大はほとんど起こりません。しかし筋力はどんどん上がっていきます。これは
今まであまり働いてなかった筋肉の筋繊維にウエイトという"新しい刺激"が神経に与えられた事によって働くように目覚めた
のです。つまり筋力は
動員される筋繊維の数によっても左右される
のです。つまりこれはインターバルとセットのメカニズムのページで登場する「なまけももの筋繊維君」の話です。軽いウエイトでは筋繊維君たちはみんなで働いてくれません。
より多くの筋繊維君たちを動員するにはより重いウエイトを課す必要がある
のです。
逆に言うと、上表のような
5RMくらいの「高負荷低回数」
での重いウエイトでトレーニングを課すことで
より多くの筋繊維君たちが同時に働いてくれる事でより大きな筋力を発揮することができる
→筋繊維動員率が向上する
ということなのです!いくら筋繊維君一人一人が太くなっても同時に働いてくれなければその太さに見合った筋力を発揮する事はできません。
そのため筋力アップには上表のように高負荷でのトレーニングが必要になるのです。
では筋力、筋肉と言えば「パワー」ってなんて゜しょうか?
2:筋力と"パワー"の違いとは?
パワーとは、力×速さです。つまり運動におけるパワーとは筋力 × 筋肉の収縮速度です。
- 強い筋力を発揮して100キロのバーベルを持ち上げても持ち上げるスピードが遅ければパワーは低くなり、
- 逆に100キロより軽いバーベル、つまり持ち上げる筋力が100キロより低くても、持ち上げるスピードが速ければパワーは高くなります。
よって、パワーを向上するには筋収縮速度を向上する神経系・プライオメトリクストレーニングを行います。
一方、その筋繊維君一人一人を太く筋肥大のメカニズムとは?!
3:筋肥大のメカニズム
筋肉が太くなりには様々な要因があり、はっきりこれだ!というメカニズムは明確にはなっていません。しかし1つだけ分かりやすい話があります。「成長ホルモン」という言葉をご存知でしょうか?
これは筋肉をはじめからだの成長をうながすホルモンですが、激しい運動をした後は特にたくさん分泌されます。このような筋肉を太く成長させる=筋肥大させるにもこの成長ホルモンは、
乳酸など筋肉活動の際にの代謝物質が蓄積されるほど多く分泌される
と考えられています。 しかし「乳酸が筋肉にたまって・・・(泣)」などと泣き言を言った経験はあるでしょう! ぞくに疲労物質とも言われる乳酸ですが、実際には疲労物質ではなくむしろ筋肉発達に不可欠とも言えます。
その乳酸が多く出るトレーニングメニューがいわゆる無酸素運動、糖質エネルギー中心の運動で、
乳酸はこの糖質エネルギーが使われた時の代謝物
なのです。だいたい上表の負荷設定
15RMから8RMの「中負荷高回数」
でのトレーニングになります。さらにインターバルもインターバルとセットのメカニズムのページで解説したとおり短めに設定します。
筋力アップなら筋繊維君を休ませるためにインターバルを長めにとりましたが筋肥大では
筋繊維君たちを"おいこむ"ために短め
にするのです。筋肉を限界までおいこんで筋肉をパンパンにパンプアップさせよう!
パンプアップとは
パンプアップとは、限界までやって筋肉がぱんぱんになって一時的に筋肥大した状態になるこという。しかしこの筋肥大はあくまで血液や水分が筋肉に集まってなった一時的なものである。
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でもこの「筋肉がパンパン」になるのって、他にもあったような・・・・・そうです。それについても解説しましょう。
4:空気イスで大量乳酸?アイソメトリックストレーニングについて
昔(今でも?)は部活などでよくやらされた筋トレで、壁に背中をつけて中腰状態で長時間我慢する「空気イス」のような我慢筋トレが行われていました。
確かにこのような形でも長時間筋肉を収縮し続けていれば乳酸は「たまり」かもしれません。このようなじっと力を出し続けるトレーニングをアイソメトリックストレーニングと言いますが、
力を出し続ける時間が長くなるほど負荷も弱く、糖質エネルギー中心の無酸素運動ではなく脂肪がエネルギーとして使われる割合が多い有酸素運動になってしまう
のです。つまりマラソンとおなじです。これでは前述の筋肥大の条件に合わず筋肥大は期待できません。逆にマラソンだって糖質エネルギーが使われ乳酸も出ます。でも筋肥大はできません。
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そして筋肥大にさらに不可欠な物とは・・・?!
5:デカくりたければ食べよう!筋肥大 = 食べ物
そして消費し疲労した筋肉を回復させる(→超回復とは)させるために糖質やタンパク質を補給しなければなりません。トレーニング後はとにかくたくさん食べよう。筋肥大させるには特に
消費エネルギー < 摂取エネルギー
になるようにしっかり食べよう。
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しかしさらにめんどくさい問題もあるのです。
6:筋肉の発達のための第三の条件"刺激"
筋力アップをめざした高負荷メニューも、筋肥大中心の中負荷トレーニングも、同じパターンばかり続けていると、
筋繊維君たちが刺激に慣れてしまい、筋肉の発達が止まってしまう
のです。めんどくさいですね。そのため定期的にメニューに変化つけ、
新しい刺激を与える
ような計画性も必要になってきます。変化をつければ高負荷メニューでも筋肥大はするし、中負荷メニューでも筋力アップはします。筋繊維君たちは、怠け者であるだけではなく飽きっぽいのでありました。
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最後に実は誤解の多いいわゆる「最大筋力」についての解説をしましょう。
7:最大筋力とは
スポーツ科学では「最大筋力」とは等尺性収縮、つまり先ほどの「アイソメトリックス」で発揮される最大の筋力をさすことがあり、いわゆるウエイトトレーニングのような短縮性収縮における最大の筋力=1RMは、このアイソメトリックスでの「最大筋力」のおよそ70%にあたります。
筋曜日の肉たちへでは、わかりやすさを考え「最大筋力=1RM」と表現することにしています。
また、スピードトレーニングで「最大筋力の30%」あるいは「50%」で効果があるとよくいわれていることがありますが、これはアイソメトリックスでの「最大筋力」に対しておよそ30%であり、これがちょうど1RMの約50%ほどになります。
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タンパク質の合成のしくみ。筋肥大に必要なタンパク質量、摂取タイミングなどの最新研究が掲載。
結び
前述したように、筋肥大には様々な可能性が考えられ厳密なメカニズムはまだはっきりとわかっていないのです。20回以上できてしまう軽い負荷でも筋肥大するという研究もあります。しかしはっきりしてるのはそれくらいの軽負荷では効率も悪く、高回数による関節負荷のリスクもあります。やはり筋トレは量より質を追求すべきでしょう。
そして筋肉の発達には筋肥大・筋力だけではなく第三、第四の要素が実はあります。次はそのた第三、第四の要素について学ぼう!