1:腹筋運動は腰に悪い?
腰によくない腹筋とは
腹筋をやってもらうと言いながら「腹筋は腰に悪い」などとは何事だ、と思ったあなたはもっともダ。
だが「腹筋を鍛えれば腰に良い」と言う話は以前からよく聞く話だがこれは誤解である。まず「腹筋」というのがダメだ。日本では「腹筋」というとほとんど100%近い人々が右のような腹筋運動を思い浮かべるだろう。
これは「シットアップ」と呼ばれる大昔から行われ続け、現在でも学校の体力テストの種目にもなっている"ザ・腹筋"といっても良いくらいなポピュラーな腹筋運動である。20世紀の70年代くらいまではこれを膝を伸ばした状態で行っていた。それが「脚を伸ばすと腰に悪い」と言われるようになり膝を曲げて行うようになる。
なぜ腹筋が腰に悪いのか
そして21世紀の現在。まだ明確な根拠はないものの、このシットアップ自体が「腰に悪い」と考えられるようになっているのは確かである。理由は
腰椎に過度な負荷がかかる
からに他ならない。
また、同じ理由で右のようないわゆる背筋運動もNGである。この「上体反らし」は学校の体力テストではすでに行われていない。
腹筋、あるいは背筋が腰をささえているのは間違いない。だがその腹筋は、このシットアップできたえられる、いわゆる割れている「腹直筋」ではない。「腹横筋」である。
腹横筋と、かつては後腹筋などとも呼ばれた3つの腰の筋肉=腰方形筋、多裂筋、脊柱起立筋、さらには腰回り上部(横隔膜)、下部(骨盤底筋)、で形作る円筒形の筋肉群(コアマッスル)とともに腰部をささえているのである。
▼こちらも!
ではその腹横筋と腰の関係についてみていこう。
2:腹横筋と腰・体幹
腹横筋については腹横筋のページの他当筋曜日の肉たちへ内の各所で解説しているのでここでは腰との関連を中心に解説する。
「腹筋をきたえれば腰が保護される」とは、結論から言うとこの腹横筋が働いている状態をいうのだが、
腹横筋は幅の広い腰痛ベルトのような構造になっており、腹横筋に力が入り収縮すると、このベルトが締まってコアマッスルが稼動し体幹が真っ直ぐ安定して、結果腰へのストレスから保護する
、ということである。
つまり「腰のために腹筋をきたえろ」とは
「腹横筋を使えるようにしろ」
ということである。しかし上記の「シットアップ」は腹直筋はきたえられるが腹横筋はあまり強化する事はできない。
ではどうすればいいか。次はいよいよ腹横筋のきたえかたである。
3:腰にストレスをかけない腹筋のトレーニング
スクワット
いよいよ、などと言っといて申し訳ないが、腹横筋のトレーニングについてはすでにスクワットのページで解説している。そう、スクワットが腹横筋の筋トレになっているのである。
体幹を真っ直ぐ安定させ股関節を動かすトレーニング
である。この安定した体幹をささえるために腹横筋他コアマッスルが働く。股関節を動かすことができないと、屈伸のページで解説したヘタレ屈伸になってしまいそれこそ腰に悪い。
そして注意すべきは、スクワットは腹横筋だけではなく腹直筋も働いていることである。
腹直筋が弱いと体幹が後に反りすぎて腰にストレスがかかる
のダ。だからといってさきほどのシットアップのような腹筋運動もNGダ。
だが腰が反る場合と言うのは必ずしも腹直筋が弱いからとは限らない。それは
骨盤の前傾が強すぎる
場合である。腹直筋が弱いから骨盤が前傾しすぎるとも言える。女児にそう言う場合がよくある。しかし中高年の場合はおそらくそうではない。
股関節の柔軟性
このページをご覧になっている中高年の多くは
骨盤前傾できるほど股関節の柔軟性はない
だろう。腰痛が元々ある人ならなおさらだ。逆に股関節の柔軟性がないからこそ上のようなヘタレ屈伸になってしまうと言えるだろう。
つまり股関節の柔軟性や腹直筋の筋力が弱い中高年が、腹横筋を使えるようにして腰回りをきたえるには、腹横筋と股関節の動きを連動させるような運動すればよい。次はそれをやってみよう。
体幹トレーニング
これはいわゆる「体幹トレーニング」として行われるエクササイズメニューである。これなら体幹の安定性を維持して股関節を動かすということを体感できる。スクワットと同じ股関節の大殿筋と太もも裏側のハムストリングスを使うエクササイズでもある。
腹横筋を締める、つまりお腹を引っ込める(ドローイン)しながら脚を上げ下げしてみよう。大殿筋とハムストリングスを使って脚をしっかり上げて、首から脚全体が一直線になるようにする。
次は腹直筋が弱すぎて起き上がる事も困難な人のためにシットアップではない腹直筋の筋トレを紹介しておこう。
クランチ
これはクランチという腹直筋の筋トレである。さきほど腰に良くないと述べたシットアップとのちがいは
腰を床から浮かせない、腰を動かさない
所である。腹直筋の働きはそもそもこのクランチのように「体幹を丸める」ことである。だからそれだけやれば十分腹直筋をきたえられる。腰を床から離さず、へそをのぞきこむように上体を丸めるだけでよい。
最後に各筋トレ、エクササイズの回数等について。
4:筋トレの回数
本格的に筋肥大、筋力アップをめざすためのプログラムをここで紹介するわけではない。あくまで中高年かつ運動を始めてなんとか機敏な動きをとりもどせたら、という場合、どのくらい筋トレをやればよいか。
よく「10回3セット」などと判で押したような言説を聞くことがあるが、なぜ10回3セットなのかという説明がなければやる必要はない。
さらにショーワ育ちの老害諸子は、「ひたすら何十回何百回しかも毎日頑張る」のが美徳であると壮大な妄信をしている人もいるだろう。その価値観をどうしても捨てられなければ当サイトから永久に消えてもらっていい。
運動やトレーニングで重要なのは
- 使うべき筋肉を使い
- 動かすべき関節が動いて
いるかどうかである。ここまで解説したとおりに正確に、ゆっくり体を動かし、動かしている筋肉がじわあっ暖かくなってくれば柔軟性も向上し鍛えられている。とりあえずそこまででよい。それで正確に上記の体幹エクササイズができるようになり、体幹が安定して股関節を自在に動かせるようになったら本格スクワットにも挑戦してみよう。
▼こちらも!
結び
腰痛には腹筋、とは今でもまだ言われることはあるものの否定の方向であるのはまちがいない。そもそも腰痛の原因が様々で明確にわかっていない部分もあるのにうかつに「腹筋で腰痛予防」などという言説には注意が必要ダ。
次はその腰痛に直接関係がある背筋ダ。