1:肩・肩甲骨周辺のしくみ
「肩関節」と肩甲骨は別ダ
言うまでもないが肩、つまり肩関節と肩甲骨とは別物である。ただそれらの骨格がどのような構造になっているかを理解している人はそう多くはない。まずはそこから始める。それによって前ページまでの股関節→スクワット→体幹についての理解がより深まっていくはずダ。では始める。
肩甲骨の骨格構造
これもいうまでもないと思うが、腕が胴体に直接くっついていると思ったらもちろんそれは違う。腕と胴体をつなぐのが肩関節だとしたら、その
肩関節は肩甲骨の一部
であり、そしてその
- 肩甲骨は鎖骨に
- そして鎖骨は肋骨前中央部の胸骨に
接続している。
つまり
筋肉でつながってなければ腕と肩甲骨は、鎖骨の胸骨との接続点にブラーンとぶら下がった状態になる
だけである。理科室にある骨格標本はたぶん肩甲骨を肋骨の背中の方に針金かなんかで固定してあるのだろう。だから勘違いを生む。
そしてブラーンとならないように各種筋肉で引っ張り上げているのだが、そのうち最も大きな働きをしているのが右上のイラストの僧帽筋である。
肩の吊り橋「僧帽筋」と肩こり
僧帽筋は首・脊柱から鎖骨と肩甲骨をしっかりと吊り橋のように釣り上げて支えている力強い筋肉でもある。
つまりこの僧帽筋は常に腕と肩甲骨をぶらさげた形で緊張状態にある。そのため
僧帽筋は疲労がたまりやすく柔軟性を失って稼働域が小さくなっていく。
いわゆる「肩こり」状態である。
しかし自由度の大きい肩の動きは肩甲骨と肩関節が連動して生み出している。そのため僧帽筋がこって柔軟性が低下すると、肩甲骨の稼動域も小さくなる。その状態で腕や肩を無理に動かそうとすると、腕と肩甲骨をつないでいるローテーターカフという肩のいわゆるインナーマッスル(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)にストレスががかかることになる。
そして僧帽筋の肩甲骨の柔軟性の低下はさらなる問題も引き起こすのダ。
2:僧帽筋と腰・体幹
肩甲骨や肩周辺の柔軟性・稼働域がないと腰への影響も
出てくる。
たとえば右のように腕をまっすぐなまま上に伸ばした時、耳の後方まで肩関節の稼働域が確保できるだろうか?耳の後ろへ行く代わりに体幹がのけぞってはいないだろうか?
もうお分かりだろう。肩の柔軟性がなさが腰腰椎へストレスを与える一例である。横に上げる場合にも同様である。腕ではなく肩甲骨だけを動かす場合でも、肩甲骨周辺の柔軟性がなければ肩甲骨が動かずやはり体幹が傾いてしまうはずダ。
では肩・肩甲骨周辺の柔軟性を向上させるためのトレーニングをやってもらう。まずは肩甲骨からダ。
3:肩甲骨の稼働域を広げるトレーニング
僧帽筋のウオーミングアップ
重い物を持っていきなり腕を持ち上げない事だ。何も持ってなくても肩に不安な人は上げないだろう。そのために肩甲骨がある。つまり肩甲骨を動かせなければ肩に負担がかかるのダ。よって、まずは肩甲骨をしっかり動かせるようになってもらう。
まずは「僧帽筋で肩甲骨を動かす」という事を意識するために右のような「ショルダーシュラッグ」と呼ばれる僧帽筋のトレーニングをやってみよう。ダンベルを持つ必要はないが2、3キロ程度の重りを持ってやる方が僧帽筋を意識しやすい。
3秒から5秒ぐらいかけてゆっくりと肩、いや肩甲骨を持ち上げてみよう。これ以上上がらないという所まで持ち上げ僧帽筋が収縮しているかしっかりと意識しよう。
そして同様にゆっくりと同じ時間をかけて下ろす。これを繰り返して少し疲れて上がらなくなる一歩手前くらいまでやってみる。
- ★始めはなかなか上がらなくても、繰り返していくうちに僧帽筋や他の周辺の筋肉が温まり肩甲骨の稼働域が広がっていき、より高く持ち上げられるようになってくる。
- ★下ろす時もできるだ下方へ肩甲骨を下げる。これによって僧帽筋がストレッチされる。
さらに大きく肩甲骨の稼働域を広げる
右のようにゆっくり大きく肩甲骨を動かす。これによって下の肩甲骨の機能動作(外転-内転、挙上-下制、回旋)において稼働域を広げることになる。
シュラッグもそうだがゆっくり、そして
じょじょに稼働域を広げていくという事を必ず意識
しながらやることダ。
▼こちらも!
では肩甲骨が動くようになった所で、次ぎは肩、肩関節稼働域を広げるためのトレーニングをやってもらう。ただし肩を動かしたら痛いとか、そういう人は参考程度にしてほしい。
4:肩関節の稼動域トレーニング
肩関節と肩甲骨を同時に動かす
腕を横に伸ばして回してみよう。最初は小さくてよい。じょじょに回転半径を大きくしていく。大きくしていくほど肩関節だけでなく肩甲骨も大きく動く。特に後方への稼働を意識してみよう。両腕同時に動かした方が肩甲骨の動きも意識しやすいだろう。
肩関節だけを動かす
腕を横に開き、内旋と外旋(→肩関節の仕組み)を繰り返してみよう。できるだけぎりぎりまで内旋、外旋させる。肘から先だけを回す(回内・回外)ではなく肩関節をしっかりと回す。どうしても回内・回外になってしまう場合は肘を直角に曲げてやってもよい。
これらは何をやってるかというと、上腕骨と肩甲骨をつないでいるローテーターカフと言われる肩関節のいわゆるインナーマッスルを動かしているのダ。
さらに大きく肩関節と肩甲骨動かし稼働域を広げる
右のようにゆっくり頭上まで手を上げていこう。できうる限り耳の後方までもっていく。腕をのばしつつ内旋させて両手の甲を合わすようにするとより耳の後方まで下がりやすい。
また、下ろす時も両肘を背中の後ろでくっつけるような意識でくぐっと肩甲骨をできうるかぎり内転させる。
→肩・肩甲骨の稼動域を広げるヨガポールを使った体幹トレーニングメニュー
結び
どうだろうか。肩と肩甲骨を自在に動かせるようになってきただろうか。これで肩こりが解消するなどとはうかつには言えないが、これくらい柔軟な肩関節を手に入れればバーベルベンチプレスだって夢ではない。
でもベンチプレスは無理でもせっかく肩の調子が良くなってきた所で、肩・肩甲骨周辺筋肉をさらに強化する筋トレをやってもらう。まずは腕立て伏せから。何?聞いてない?いやなら帰っていい。だが見るだけでもいいことがあるかもしれない。