1:空手その場突き基本フォーム
「おせーと思ったらおいっ、ハナコっ、なんだその道着・・・てか、道着じゃねーわそれ!」「あーら、水道橋のカラテSHOPで買ってきたんだけどお」「うそつけっ!!しかもそれ、黒帯のつもりか?!」「そんなことよりはやく始めましょっ、時間がすぎちゃうよー」「むむ、そこねらってわざと遅れてきやがったな・・・しかたねー、始めるか・・・まずはその場突きだっ」「その場好き?私も大好きよっ、聖奈っ♥」「・・・・」
その場突きの基本の立ち方
まずは私がその場突きの見本をじっくり見ていただくよ!どう?バシっと腰が入ってるだろ。空手の突きをビシッと極めるには立ち方が大事。足に注目だよ。やや内股になってるよね。この立ち方を内八字立ち、あるいはナイハンチ立ちと言います。
- ★両足間隔はだいたい肩幅+拳1個から2個分広め(糸東流はこれより狭め)
- ★足を30度くらい内股、もしくは足の外側の線を平行にする(この場合は平行立ちとも言う)
- ★重心を落とし膝がつま先の上くらいに乗るようにする
※平行立ちは剛柔流は足の外側を平行、和道流、糸東流、松濤館流は内側を平行にする
ではなぜ内股にしなければならないのか?
なぜ内股か
例えば野球のバッティングフォームを見てみよう。やはり両足の向きが内股になります。掛布雅之氏は「前足に壁を作る」と表現しましたが、前脚、その場突きの場合は突く方と逆の脚(右手突きなら左脚)の股関節が支点となり体幹を回旋させます。この時軸脚の足が外向きになると膝も外へ向いてしまい、軸脚が安定せず回転力をバットや拳に伝えることができません。いわゆる「軸がぶれる」状態で力が外向きの膝方向外に流れてしまうのです。
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※膝の向きと足の向きは同じになる。ずれると膝の障害の原因となる可能性があるので気をつけよう
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次はその膝の使い方についてだよ。
2:空手その場突きと膝・股関節
膝と重心
前項のその場突き基本フォームのポイントとして「重心を落とし膝がつま先の上くらいに乗るようにする」というのが出てきたけど、たぶん意味がわかんなかったんじゃないかな?もちろん詳しく解説だ!膝がつま先の上と言っても道着はいてるとわかりにくい・・・ってハナコ、わかりやすいなその道着、しかもなかなか極ってるじゃないか(**;)。
この態勢が、しっかりと重心が安定した立ち方で、
打つ瞬間の地面からの反力を拳に伝えやすい(→動きの基本とパワーポジション)。
ただし膝ばかり注意しててもダメ。もっと大事な股関節の事も理解しよう。
股関節・体幹と突き
「膝が母指球に乗ってる」といっても上左のようなへっぴり腰じゃダメだよ。これじゃ体幹を通して力は伝わらない。これは股関節が使えていない=股関節の屈曲(→右:股関節とは)できていない状態なので、骨盤が後傾して体幹が丸まってしまっている状態です。ちょっと押されたらすぐ後ろに倒れてしまうでしょう。上右のように股関節を屈曲できていれば、
体幹がまっすぐとなり重心がしっかの足裏に乗り安定する
のです。
→パワーポジションと体幹トレーニング
腰ではなく体幹で打つ
便宜上「腰を入れる」と表現しますが腰と言うのはねじれません(→腰椎の体幹の仕組み)。さっき解説したように軸脚の股関節を支点に体幹を回転させるのだ。股関節を使わず本当に腰をねじろうとしたりすると腰を痛め、無理矢理肩を出そうとするとやはり腰がねじれて痛めてしまうぞ。
なのでウオーミングアップでしっかり股関節を動かそう!
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ではいよいよ空手の突きの「引き手」の謎に迫るぞ!
3:引き手の意味とは?空手道の突きの真実
引き手の目的は
「腰を回転するためだ」「突きを強くするためだ」「引き手7、突き3くらい引き手を強く」・・・どれも正しいんだと思うけど、武道の形を健康体操的な目的で行う場合(引き手は背中の広背筋のトレーニングになる→広背筋の筋トレ方法)をのぞけば目的はやはり「突きの威力を増す」につきるよね。でもボクシングとかって空手みたいな引き手しないし、空手の形にも両手突きってあるし・・・いや、実は引いてないように見えて引いてるのだ。引き手の目的はだ一つの原理に全て集約されるのだ!
引き手はニュートンだ!
立った状態でリラックスして、両手同時に思いっきり突いてみよう。どうです?上体が突いた瞬間勢いで後ろへ行ってないか。前の相手に力を加えたいのにこれでは威力が落ちてしまうよね。では今度は両手同時に後ろへ引いててみよう。どう?逆に上体が前に飛び出るでしょ。ようするにいわゆる反動です。ということは?・・・・そう!
片方を前へ突き、反対の手を突きよりもさらに勢い強く後方へ引けば、上体が前方へ体重移動し突きに体重が乗り威力が増す
のです。これは慣性力という力が働いたためでニュートンの運動の第一法則=慣性の法則によるものす。例えば車や自転車で急ブレーキをかけて止まると体が前に飛び出ますよね。逆にスタート加速の時は後ろに置いてかれるでしょ。この時前に飛び出るように働く力、後ろに置いてかれる力が慣性力です。つまり
- 前に突きを出す瞬間後方へ慣性力が働く
- 後ろに引き手を引く瞬間前方へ慣性力が働く
右のように走る時も慣性力が働いています。股関節を支点に体幹を回転させるだけなら引き手を使わなくても反対の足で地面を押せば回転できます(これは第三法則の作用反作用の法則ですね)。しかし間合いが近くて回転やリーチを長く取れない場合など、その場突きでこの引き手の技術が強い威力を発揮します。そしてこの原理の効果をより高めるには突き手と引き手を平行にします。
ではいよいよ引き手をしないパンチについてだよ!
ボクシングでは最初から引いている
その他の格闘技のパンチは確かに大きく引き手はとってないよね。そのかわり、空手の形のようにまっすぐ直立姿勢じゃなく、構えを最初から前傾姿勢になって、パンチを打つ瞬間の後方への慣性力に負けないように構えているのです。空手でも組手競技や和道流の飛び込み突きなどでは、引き手に頼らずこのような前傾姿勢での突きを使います。形の両手突きも少し上体を前傾させるとビシッと極るぜ。
- ★重心が高いほど慣性力に弱い。膝を落としてしっかりと立ち方を極める
ハナコもちょっと前傾姿勢だな。つまり引き手が弱い!「ちがうわ聖奈センセよくみて、逆に強すぎるんだよっ(`з´)」むむっ、確かに・・・・
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それから突きはしっかり相手の中段の中心=みぞおちを突こう。自分のみぞおちの高さで突けばよい。
ねらった所を正確に、かつ鋭い突きを出せるように
なるべしっ!!「はーいセンセ♥」センセはやめろ。