1:インナーマッスル・アウターマッスル
筋肉には大胸筋や上腕二頭筋のような外から見える大きくて目立つ筋肉だけではなく、その内側、体の奥の方に見えない筋肉もあります。
このような筋肉を通常インナーマッスルと呼ぶことがあります。反対に外から見える大きくて目立つ筋肉はアウターマッスルと言います。
アウターマッスルは
自分でその筋肉を意識して動かして強い筋力を発揮することができる
のに対し、インナーマッスルは主に
関節を支えたりバランスをとるために働く小さめの筋肉
であることが多く、自分で「ここだ」と意識するのは難しいと思います。
→バランスと体幹トレーニング
しかしたんにアウターマッスル、インナーマッスルという分け方では実は問題もあります。それは?!
2:モビリティーマッスル・スタビリティーマッスル
よくインナーマッスルと言えば、野球選手の肩の問題をイメージされることが多いかもしれません。
確かに肩関節にはいわゆるインナーマッスルと呼ばれる棘上筋・棘下筋・肩甲下筋などの小さい筋肉があります(→棘上筋・棘下筋・肩甲下筋とは)。
ところがこのうち棘下筋は、
背中の肩甲骨の上にある見える筋肉
で自分で意識して動かすこともできるので、前項の説明に従えば機能上はアウターマッスルと言えます。
逆に大腰筋(→大腰筋・腸腰筋とは)のように
外からまったく見えない完全なインナーマッスルで意識も難しいのに、運動動作に大きく関与し強い筋力を発揮する
筋肉もあります。
そのためインナーマッスル、アウターマッスルと明確に分離するのではなく、
- 動作にかかわる筋肉はインナーアウターにかかわらず「モビリティーマッスル」
- 体や関節の固定・維持に働く筋肉を「スタビリティーマッスル」
と呼ぶ事もあります。
例えば腹筋群や背筋群は、体幹曲げたり伸ばしたりする時はモビリティーマッスルとして、体幹の安定・維持に働く時はスタビリティーマッスルとして機能します。
体幹腰周りの腹横筋や横隔膜・骨盤底筋などのコアマッスル(→コアマッスル・体幹とは)も、完全なインナーマッスルですが、基本は体幹のスタビリティーマッスルであると同時に呼吸時は呼吸動作のモビリティーマッスルとして動きます。
このようにどの
インナーマッスル、あるいはアウターマッスルであっても動作目的によってモビリティーマッスル、スタビリティーマッスルとして機能する
事があるのです。ではどのような時にそのような違いが出るのか?!
3:筋肉の収縮の仕方で変化するモビリティー or スタビリティー
筋肉の収縮の仕方にいくつかの種類があります。一番わかりやすいのが、例えばアームカールをしている時、腕を曲げて持ち上げる時は、上腕二頭筋が短縮性収縮をしています。
反対に下ろす時は伸張性収縮をしています。このような筋肉が伸び縮みしている時の筋肉の収縮の仕方を等張性収縮(アイソトニック)といいますが、この
等張性収縮をしている時の筋肉はモビリティーマッスル
として機能していると言えます。
→伸張性収縮・短縮性収縮についてくわしく
では力をいれたまま動かないような時、例えば満員電車で誰かに押されて続けても倒れないように力を入れて踏ん張り続けているような状態の時などのように、筋肉の伸び縮みはないけれど力が入り続けている筋肉の収縮の仕方を等尺性収縮(アイソメトリック)といい、この
等尺性収縮をしている時の筋肉はスタビリティーマッスル
として機能していると言えます。インナーマッスルであるかアウターマッスルであるかはまったく関係がありません。
→アイソメトリック(等尺性収縮)についてくわしく
しかし筋肉にはさらに別の呼び方もあるのです。
4:ローカル筋・グローバル筋
スタビリティーとして働くインナーマッスルをローカル筋、モビリティーとして働くアウターマッスルをグローバル筋と呼ぶ事もあります。
ちょっとややこしいですが、スタビリティーとして働くアウターマッスルをローカル筋とは言わず、逆にモビリティーとして働くインナーマッスルをグローバル筋と呼ぶ事はないと思います。
結び
インナーマッスルと言えば文字通り「大きい筋肉の中にあって見えない小さな筋肉」と思われがちですが決してそうではなく、筋肉は働きによって様々に区分されるのです。
さて次はここまで学んだ知識をより効果的に引き出すために筋肉が動くしくみについて学んでおきましょう。それはこれまでにもたびたび出てきた「エネルギー代謝」についてです。ちょっとややこしいけど逃げるんじゃないぞ!乳酸の事もくわしくわかるぞ!!