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四股突き大沼大学空手道部の肩甲骨問題

四股突き年の瀬も近い大沼大学空手道部。大会シーズンも終了したこの時期の一年生の練習メニューは拳立て伏せ500回、屈伸1000回、腹筋500回が恒例となっており、道場から苦悶のうめき声がもれてくるのが風物詩だった。だが今年はそれらしい様子が全く見られない。

理由は、そう、彼だ。関西学生個人、全日本学生個人。さらに先週、全空連の日本国内最高峰である全日本空手道選手権では、世界選手権無差別級王者のベテラン内田秀人の全日本4連覇を圧倒的なパーフェクトで阻止し、今や学連のみならず一躍日本空手界のスーパースターにのぼりつめた彼、一回生藤田堅。同部で伝統的に行われてきた数々の"鍛錬"メニューをことごとく拒否・粉砕してきた彼がこれだけの結果を出した今、もはや主将木下の課す根性メニューに黙って従う新入生はいなかった。新入生だけではない。木下に従うのは中学時代からの後輩である黒ぶちロイドメガネの三回生丸山一人だけだと言っていい。部の活動はもともと藤田に理解を示していた副主将の西岡に実質まかされていた。

しかしもちろん木下も黙っていたわけではない。保守的であると同時に流行物にも盲目的に飛びつく木下の中で今最もサイセンタンのネタである"肩甲骨"について語るのが今の彼の精一杯の藤田に対する抵抗である。肩甲骨の稼働域を広げる事で突きが伸びるという彼の話に部員たちは一応耳を傾けてはいた。というのは木下の伸びのある左の刻み突きに関してだけは誰もが認める所ではあったし、肩甲骨の話も内田秀人など名だたるトップ選手たちも空手雑誌などで語る話でもあったからである。

しかしそんな得意げに語る木下を道場の入口付近でじっと見つめている者がいた。そう、藤田である。木下には藤田が自分を失笑していると即見えたが、今の木下もさすがに以前のように問答無用で藤田にからむことはできなくなっていた。それに失笑しているように見えたのはおそらく木下だけだろう。藤田に気づいた部員たちは口々に「全日本制覇おめでとうございます藤田先生!!」

・・・そう。木下と丸山以外の部員はいまや藤田を先生と呼んでいた。肩甲骨に関する見識を求められた藤田はホワイトボードに近づくと、肩甲骨のイラストをすらすらと描き始めた。藤田の絵のセンスにまずハートを貫かれた部員たちは藤田の話に食いつくように聞き入っていた。道場の片隅に放置された木下と黒ぶちロイドメガネ丸山の存在感は、部員たちの頭のほんの片隅にももはやチリほどもなくなっていた。呆然と立ち尽くす木下に気を使った後輩丸山は何か声をかけなければと思い、とりあえず木下にこう話しかけた。「先輩、明日から冬休みですよね」死ねボケ、と、木下は全力で思った。

藤田堅のベンチプレスと肩甲骨につづく>>


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